◇GNS3とは?
GNS3(Graphical Network Simulator)とはコンピュータ上のネットワークをシミュレート可能なツールで、GNS3のウェブページによると「GNS3は、実際のネットワークのパフォーマンスに可能な限り近づけながら、複雑なネットワークをシミュレートするオープンソースソフトウェアです。ルーターやスイッチなどの専用のネットワークハードウェアを使用せずに、これらすべてを行います」との事です。
VirtualBOXの様な仮想化技術により一台のPC上で複数のVM(Virtual Machine)が使用可能になり、簡単にサーバー・クライアント環境の検証が可能になりましたが、ネットワーク越しの検証は出来ません。大抵の場合、現場の環境では別セグメントや外部からのアクセスもある為、それらを想定した検証を行うのはVirtualBOXだけでは困難となります。
そこで、より現場の環境に近い検証を行うにはGNS3を利用する事で、ネットワーク環境のシミュレーションが可能となります。
また、個人でもCCNAの様なCISCOの資格試験受験対策で中古でCISCOルーターを購入する方も居られるかも知れませんが、タイミングよく中古市場で出回っているとは限りませんし、スイッチあるいはルーターが最低3台は無ければ試験対策になりませんし、場所や騒音も考慮する必要もあります。ですが、GNS3ならば実機を購入するにしても一台のCISCOルーターさえあれば、IOSをコピーしてGNS3を使用する事でホストPCのスペックが許す限り、複数台のルーター・スイッチ環境のエミュレーションが可能になります。
特筆すべきGNS3の強みとしては、CISCOの資格試験の受験対策に使われているシミュレーターのPacket Tracerと違い、マルチベンダーに対応している為、VirtualBOXやVMwareなどで作成した仮想マシンとも連携出来る事です。
その為、例えば別セグメントのWebサーバーにアクセスする検証や、ファイルサーバーをセグメントごとにアクセス可否の検証したり、ネットワーク越しにアクセスを行う検証が一台のPCの中で可能になります。
但し、CISCOハードウェアをエミュレーションするには実機のIOSが必要となります。IOSをGNS3に読み込ませる事でCISCOハードウェアのエミュレーションが可能となりますが、その為にはCISCOルーターからIOSをコピーするか、会社がCISCOパートナーの場合、CISCOの公式サイトからダウンロードしなければなりません。
注意点としてはGNS3はあらゆるIOSイメージに対応している訳では無く、エミュレーション出来るCISCOルーターにも限りがあります。
また、CISCOのスイッチでは定番のCatalystが使えず、代わりに使用できるイーサースイッチモジュールとして搭載可能なNM-16ESWにはスイッチング機能に限りがある為、例えばCCNAやCCNPの試験対策用途の場合、試験範囲で一部使えない機能があることは予めご了承ください。
まぁCCNA対策であればPacket Tracerの方が良いかも知れませんが、実際の現場におけるサーバーとネットワークを含んだインフラの検証を行うことはGNS3でなければ出来ません。
導入が面倒な上、少しコツを掴んでいないとトラブルが発生し易かったりしますが、サーバーエンジニアからインフラエンジニアへステップアップしたい方や、ネットワークエンジニアからインフラエンジニアへステップアップしたい方の独学におススメのツールなので是非とも使ってみて下さい。
↓実際の画像
◇使用できるIOSの種類
GNS3が対応しているCISCOルーターのシリーズは以下になります。
・Cisco 1700
・Cisco 2600
・Cisco 3620
・Cisco 3640*
・Cisco 3660*
・Cisco 2691
・Cisco 3725*
・Cisco 3745*
・Cisco 7200*
* GNS3の推奨シリーズ
上記で推奨されているシリーズはGNS3上で安定的に動かす事が出来るそうです。
上記のルーターが複数あるとしたら、推奨シリーズのルーターのIOSを使用すると良いかと思います。本稿ではCisco 3725を使用します。
では、IOSを入手後、実際にGNS3の設定を行っていきましょう。
以下の作業を実施する前に、IOSの入手はCISCOルーターからFTPでIOSをコピーするか、CISCOの公式サイトからダウンロードして下さい。(公式サイトからダウンロードするにはCISCOパートナーである必要があります。)
◇GNS3のインストール
①以下のサイトよりGNS3をダウンロードします。
https://www.gns3.com/software/download
Windowsの「Download」をクリックし、ユーザー登録を行い、必要な情報を入力後、GNS3をダウンロードしてください。
②インストーラーを実行します。
セットアップ画面でNext>をクリックし、ライセンスの使用契約画面では「Agree」をクリックしてください。以降、基本的にデフォルトの設定でそのまま「Next>」で先に進めて良いかと思いますが、もしChoose ComponentsでWiresharkのチェックが漏れている場合は入れておいた方が便利です。
③インストールが完了すると、GNS3が起動し、Setup wizardが表示されるようになります。
二つ目の項目「Run appliances on my local computer」を選択し、「Don't show this again」にチェックを入れて下さい。
④Local server configuration画面でHost bindingにホストコンピューターのIPアドレスを入力してください。(例:192.168.128.145)
⑤Local server statusで「Next>」クリック
⑥Summary画面で「Finish」をクリックし、Setup wizardを終了します。
⑦New appliance template画面が出る場合は一旦「Cancel」をクリックします。
⑧Project画面のnameに適当な名前を入力し、「OK」をクリックします。
⑨メニュー→「Edit」→「Prefences」でウィザードを開きます。
⑩左側リストから「IOS routers」を選択し、画面下の「New」をクリックします。
⑪New IOS router template画面で「New Image」にチェックを入れ、「Browse」でIOSイメージのパスを指定し、「Next>」をクリックします。なお、本稿ではCISCO3725のIOSを使用しています。
⑫Name and platform画面で「Next>」をクリックします。
⑬Memory画面でDefault RAMを指定します。
Feature Navigatorへのリンクがあるのでエミュレートする機種に必要なRAMを調べて下さい。本稿ではCISCO 3725の為、256MiBを指定します。
⑭Network adapters画面で「Next>」をクリックします。
⑮WIC modules画面で「Next>」をクリックします。
⑯Idle-PC画面で「Finish」をクリックします。
以上でルーターテンプレートの作製が終了し、「Preferences」画面に戻ります。
IOS routersに作成したルーターが追加されていることを確認出来ます。
本稿ではイーサースイッチルーターも使用予定の為、引き続き、イーサースイッチルーターの作製も行います。
GNS3には標準搭載スイッチがありますが、ごく基本的な機能しか使えない為、より多くのスイッチング機能を使うには以下の手順でNM-16ESWモジュールを搭載します。
⑰左側リストから「IOS routers」を選択し、画面下の「New」をクリックします。
⑱New IOS router template画面で「Existing Image」にチェックを入れ、「Browse」でIOSイメージのパスを指定し、「Next>」をクリックします。
⑱Name and platform画面で以下の設定を行い「Next>」をクリックします。
・Name : EtherSwitch router
・This is an Etherswitch routerにチェック
⑲Memory画面で⑬と同じDefault RAMを指定します。
⑳Network adapters画面でslot1から「NM-16ESW」を選択し、「Next>」をクリックします。
㉑WIC modules画面で「Next>」をクリックします。
㉒Idle-PC画面で「Finish」をクリックします。
以上でイーサースイッチルーターの設定も終了です。
NM-16ESWモジュールの搭載により、FastEthernet1/0 から 1/15のポートが追加されましたが、スイッチ機能を利用するにはこれらのポートを使用する事を覚えておいてください。
次稿ではVirtualBOXと連携する前に、ルーターとスイッチの設定を行っていきます。